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ミステリの祭典

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ピュア

作家 小野美由紀
出版日2020年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2020/08/21 08:47登録)
五つの短編が収められているが、いずれも他人から求められる役割と「自分自身」の葛藤を描いている。なかでも表題作は衝撃的だ。
環境汚染により荒廃した未来では、強靭で攻撃的な身体に変化した女たちは人工衛星に住み、男たちは地球に残った。そして女たちは時折、自身の義務ににして名誉である妊娠のために地表を訪れ狩りをする。
男と交尾した後、女は相手を捕食するのだ。男女の地位を過激に反転させた設定だが、そこには現実の性差の息苦しさ、異性への不信や不満が投影され、思いのほか腑に落ちる。
男女どちらにとっても「らしさ」を求める社会的強制力は重い。自分自身も知らず知らずに偏見にとらわれており、内面化された価値観から抜け出すことは難しい。その悲哀は「ピュア」の世界を男性側から描いた「エイジ」を読むことで、深く理解されるだろう。

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