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ミステリの祭典

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京極夏彦の世界
永瀬唯他

作家 評論・エッセイ
出版日1999年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2020/08/16 22:10登録)
幾重にも張りめぐらされた蜘蛛の糸のように、複雑にからみ合った要素が織り成す京極夏彦の世界…。ペダンチックとも称されるその世界をより精緻に浮かび上がらせるために、気鋭の論者が多角的な視点から縦糸・横糸を解きほぐし、京極作品に迫る。ミステリ論、陰陽師小説論、怪談小説論、宗教性、心理学、ジェンダー論、サイバーパンクなどの視点から見えてきた「匣の意味」「みどりなす長き黒髪の女たちの意味」「京極堂と探偵榎木津の関係性」とは…。京極夏彦の世界を読み解き、ほの暗い深奥に足を踏み入れるための道しるべ。
『BOOK』データベースより。

野崎六助、鷹城宏ら評論家を始め、精神科医、大学教授、短大講師ら八名による京極夏彦論。アンチミステリ、陰陽師の軌跡、ジェンダー論、妖怪の考察、宗教など様々な角度から京極夏彦の小説を弄り回します。まさにカオスの様相を呈し、評論というより学術書並に難解です。
『姑獲鳥の夏』から『塗仏の宴』までの京極堂シリーズが俎上に上げられていますが、『狂骨の夢』の矛盾を抉るケースが多いのが目立ちます。また、三作目まではある意味習作で『絡新婦の理』で頂点を迎えるとの意見もなるほどと思えなくもありません。個人的に最高傑作と考えている『魍魎の匣』にはあまり触れられていないのは、逆に完成度が高いせいなのかも知れないとも考えられます。

まあ各人好き勝手なことを書いているので、とても十全に理解することなど不可能です。京極堂シリーズのガイドブックと軽く考えるのは大間違いで、いずれ劣らぬ一家言を持った論客たちには舌を巻く思いです。それだけの材料が揃った題材だという証左でもあるようです。

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