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ミステリの祭典

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殺人都市川崎

作家 浦賀和宏
出版日2020年05月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2020/08/09 22:21登録)
治安が悪く、地獄のような街で地べたを這いずって暮らしていると考えていた俺は間違っていた。出会ったら命がないと言われる、伝説の殺人鬼・奈良邦彦。本当の地獄は、あいつとの出会いから始まった。彼女を、そして両親を殺された俺は、それからも執拗に奈良に狙われ続け……。41歳の若さで急逝した天才作家・浦賀和宏氏最大の問題作、最期の挑発&最後の小説。
裏表紙より。

遺作、或いは最後の小説。『デルタの悲劇』が先だったのか後だったのかを私は知りません。しかし、いずれにしてもこれより先はもう浦賀和宏の新作を読むことは誰にもできません。
さて、この小説は浦賀らしさが随所に出た、彼の作品の中でも異色の部類に入るのではないかと思っています。スプラッターが目立つのは新味と捉えるべきでしょう。新シリーズとして発進した本作なので、どこかしら未完に終わっているのではないかとの危惧もありましたが、それは杞憂に終わりました。
殺人鬼奈良邦彦がシリーズを通して出現するという設定だったらしいのです。それが毎回同じ人物なのか、そうでないのかを知るすべはありません。問題作と言えば、そうなのでしょう。しかし、浦賀の作品は問題作だらけなので、ひと際目立つ存在だとは思いません。それでも最後の作品に相応しい小説に仕上がっていると私は感じます。気を付けたいのは、川崎へのディスり方が半端ないってことです。

どこか自身の某作品に似て、ラストは世界がでんぐり返しを起こし、足元が崩れ落ちる感覚を体験できます。それはある既視感に近いものがあり、私自身には好ましく感じられましたが、大方の読者はそれまでの話は何だったんだ、と思う事でしょう。これが浦賀ですよ。おそらく誰も7点以上は付けないでしょうが、私は胸を張ってこの点数を献上したいと思います。この世界の片隅に蹲る一ファンとして。

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