(2020/07/22 21:20登録)
(ネタバレなしです) 英国のベルトン・コッブ(1892-1971)は自身が勤務していた出版社から自作を出版するという職権乱用疑惑のある作家ですが(笑)、その筆力は確かだったようでチェビオット・バーマン警部補(後年作では出世します)シリーズを中心に50作以上のミステリーを書いただけでなく、警察関連のノンフィクションは警察が公認購入したほどです。ミステリー作家としては1936年がデビューなのでクリスチアナ・ブランド、ニコラス・ブレイク、マイケル・イネスなどの黄金時代後期の作家グループなのですが日本では不遇だったようです。1936年発表の本書はバーマンシリーズ第2作の本格派推理小説ですが何と真相説明では手掛かり脚注が付いています(この趣向は初期3作までらしいです)。しかしパズル性よりも凝ったプロットの方が印象に残る作品でした。大家族が同居する屋敷で毒殺事件が発生し、早くも第2章ではバーマンの推理が披露されます。この段階では無論犯人はわかりませんが新たな犠牲者が狙われるのではという疑惑が生じ、犯人探しと同時に犯行阻止が目的となる展開がとてもユニークです。登場人物の個性も丁寧に描かれ、心理ドラマとしても読ませる作品です。
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