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ミステリの祭典

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鶴屋南北の殺人
森江春策シリーズ

作家 芦辺拓
出版日2020年06月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 麝香福郎
(2023/11/29 23:20登録)
四代目鶴屋南北の歌舞伎台帳が、ロンドンの骨董兼古書店で発見された。「銘高忠臣現妖鏡」と題されたそれは、「東海道四谷怪談」の初演から間を置かずに書かれた、本人の真筆によるものと判定される。
この作品の鑑定に携わった研究員・秋水理矢の依頼を受けた森江春策は、上演に関わる諸問題の調停のため、稽古中の歌名十郎の元を訪れる。ところが「屋台崩し」のテスト中、舞台演出を手伝っていた学生が、一気に崩れ落ちた大道具の下敷きになり死亡する。そしてそれをきっかけに、新たな事件が続いていく。
開放的な田沼意次の時代と、抑圧的な松平定信の時代を生き抜き、老境に差し掛かってようやく名を上げたのが鶴屋南北である。一年に渡った南北の沈黙機関、奇天烈な作品に込められた趣向の真意、そして現代で起きた連続殺人の意図は。これら二つの時代の重層的な謎が、幻の作品を通して合わせ鏡のように向かい合い解かれていく。
更に新型コロナウイルス騒ぎで露呈された、この国の文化に対する冷酷極まりない扱いまでもが浮かび上がる。鶴屋南北とそん色ない奇想に満ちた本書は、この時代に時宜を得た作品となった。

No.1 6点 びーじぇー
(2022/11/15 21:43登録)
ロンドンで発見された鶴屋南北の幻の戯曲が京都で上演されようとしていた。交渉のために弁護士の森江春策が京都へ赴いたところ、劇場に死体が出現した。江戸と現代、舞台と現実が交錯する謎を森江はいかに解明するか。
現代に事件の謎もさることながら、最も魅力的なのは作中の南北の戯曲。「仮名手本忠臣蔵」の登場人物を借用しながら、原点と史実の赤穂事件とも似ても似つかない、あまりにも不可解な内容となっている。
室町時代に仮託して当時の世相を批判した「仮名手本忠臣蔵」を踏まえて南北がある人物を自身の戯曲で批判し、それが著者自身による現代の世相への批判と重ねられているという三重の入れ子構成が周到。

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