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ミステリの祭典

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鬼シリーズ

作家 高橋克彦
出版日1996年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2020/07/03 22:19登録)
げに、人の心は恐ろしきもの―平安の都を揺るがす鬼や悪霊、怪異に立ち向かうのは滋丘川人、弓削是雄、賀茂忠行、賀茂保憲、安倍晴明ら陰陽師たち。“応天門の変”の真相を暴く「髑髏鬼」など五篇を収録した妖かしの物語集。鬼と陰陽師の壮大なストーリーが今、始まる。
『BOOK』データベースより。

平安時代に活躍した、陰陽寮に籍を置いていた安倍晴明を始め、その師となる賀茂忠行、息子保憲、弓削是雄ら陰陽師が鬼と対峙するファンタジー。とは言え、激しいバトルなどはほとんどなく、人形(ひとがた)や式神を駆使して魔を祓うといったシーンが中心になります。
有名な平将門の首級が都から空を飛んだという言い伝えの、新しい解釈とも言える逸話や、菅原道真の怨霊の力がどれほど強力だったのかなど、裏歴史的に興味深い物語もあります。何より、時代小説らしく会話文は「~にござる」的な感じなのでちょっと取っ付き難さもありますが、空想なのにまるで自分がその場にいるような臨場感を覚えるのが、この人の文章力の素晴らしさではないかと思います。

鬼よりも恐ろしいのは人の心というテーマは、現代のホラー作品に通じるものがあり、今も昔もその辺りは変わらないのかも知れないと感じたりもします。又、ミステリの要素もありながら、実在の人物たちの恨み辛みや思惑などが錯綜する、人間ドラマとしても読みごたえがあります。短いながらも充実した内容の短編集ではないかと思います。

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