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ミステリの祭典

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生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者
セオ・クレイ

作家 アンドリュー・メイン
出版日2019年04月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 tider-tiger
(2020/06/21 15:25登録)
~かつての教え子が殺害された件で生物学の教授セオ・クレイは逮捕された。だが、犯人はどうやら野生の熊だったらしく、クレイは釈放された。事件に興味を抱いたクレイは釈放されたあと自身で調査を試みる。クレイの下した結論は熊を模した連続殺人犯が野放しになっているという恐るべきものだった。~

2017年アメリカ。原題『The Naturalist』シリーズ化されており、今のところ二作目まで翻訳出版されている。作者のアンドリュー・メインは奇術師としてけっこう有名な人物らしい。

不器用で気弱だが頑固な変人学者クレイのキャラが不器用な叙述とほどよく調和しており(あえて不器用に書いたのか作者が本当に不器用なのかは不明)、熊を装った連続殺人犯というアイデアもそそられる。展開も非凡で話がどんどん奇妙な方向に転がっていくのは面白いのだが、残念なことにリアリティには疑問がある。
生物学探偵という看板にも大いに疑義がある。ここに興味を引かれて手に取った本であったが、生物学的なアプローチで事件の真相に迫るわけではなかった。セオ・クレイは生物学者ではあるが、あまりそれらしさはなくて、むしろ情報工学者としての知識、テクノロジーの力で事件を嗅ぎ当てていく。そのテクノロジーに納得のいく説明がないのでかなりご都合主義に感じられてしまう。そんな簡単に~をみつけてしまえるもの? 
殺人に対するユニークな視点、先を読ませない(こんなん読めるか!)展開、ほどよく奇人変人なクレイの造型、ヘタウマな文章などなど美点?もあるが、後半に私の許容範囲を超えた逸脱もあったりして、とにかく粗の目立つ作品だった。
怖いもの見たさに一読してみるのもいいかもしれない。採点は低めだが、個人的には面白い作品だったと思う。
こいつが犯人ではないかと強く感じていた人物がいたのだが、ぜんぜん違っていた。というよりも犯人を推理できるような話ではなかった。

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