(2020/06/19 21:26登録)
(ネタバレなしです) 米国のハワード・ヘイクラフト(1905-1991)は20世紀を代表するミステリー評論家として有名で、「探偵小説・成長とその時代」という副題を持つ本書は代表作とされています。本書が出版されたのは1941年、ミステリーの始祖とされるエドガー・アラン・ポーのミステリー第1作である「モルグ街の殺人」(1841年)が世に出て丁度100年目をねらっていたのでしょうね。第1章から第10章までがポーの時代から現代(1930年代)に至るまでのミステリー史ですが、序文で「真正な『純粋』探偵小説とその作家に限定して」と断り書きしてあるように紹介されているのはほとんどが名探偵の活躍する本格派推理小説とその作家です。ハードボイルドの始祖の1人であるダシール・ハメットは敬意をもって高く評価されていますがこれは例外、HIBK派のサスペンス小説で名高いM・R・ラインハート(当時まだ現役で人気もあった)は手厳しく扱われてます。第11章から第18章は多彩な内容で、本格派好きの私としては第11章の探偵小説の「戒律」については結構共感しました。第12章でミステリー作家はもうかるのかについて論じているのがユニークだし、第15章での民主主義とミステリーの関連づけも(いい意味で)時代性を感じさせます。第17章のクイズでは「このトリックを使った作品は」とか「この犯人の登場する作品は」とかネタバレしている問題がありますので注意下さい(私は海外本格派大好きなのに半分も正解できませんでした)。今となっては時代の古さを感じるところが多々ありますが本格派黄金時代の評論として権威があったというのも納得です。
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