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ミステリの祭典

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妖星伝(六)
人道の巻

作家 半村良
出版日1998年12月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2020/06/22 15:13登録)
 「好きだ」
 「この、星が・・・やはり」

 (六)巻は雑誌「小説CLUB」昭和五十四(1979)年二月号から、昭和五十五(1980)年五月号まで。時代背景は九代将軍徳川家重が死去する宝暦十一(1761)年六月十二日以後から、天明元(1781)年七月以降、田沼意次が和泉国日根郡に領地を賜って四万七千石の大名となり、嫡子意知が山城守となって以後の時期まで。歴史的には天明の大飢饉の直前にあたり、本巻最終章〈DIMINUENDO(ディミヌエンド)〉を以て「妖星伝」は、長期に渡り一旦休止します。
 番外編ともいうべき特殊な位置付けの巻。「人道の巻」のタイトル通り、紀州胎内道を覗き人の見るべからざる物を見ながらも、外道皇帝や他の鬼道衆たちと天道尼、桜井俊策兄妹や日円・青円に永遠に置き去りにされた一揆侍・栗山定十郎と、地球に残された最後の鬼道衆・朱雀のお幾の余生が語られます。「この二人にひとときの安らぎを」との想いで執筆された、文字通りの拾遺編。
 SF要素は断片的に語られるだけで殆どありません。宝暦十一(1761)年十二月十一日に起きた「上田騒動」という大きな山はありますが、基本的に本筋から零れてしまったキャラクターの「その後」を描くパート。伝奇SF作家・半村良のもう一つの顔、社会に対する一市井人としての思いが詰まった巻です。

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