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ミステリの祭典

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妖星伝(二)
外道の巻

作家 半村良
出版日1998年09月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点
(2020/05/16 10:28登録)
 紀州胎内道を抜け、おぞましき人類の未来を知った人々の道は分かたれた。鬼道を捨て、ただ一人の女として桜井俊策との愛に生きる事を決意する頞儞羅(アネラ)のお幾。しょせんは無駄と知りつつ塗炭の苦しみをなめる百姓たちのため、世を覆さんと一路京へ向かう一揆侍・栗山定十郎。だがその彼も以前とは異なり、どこか命の捨て場所を探すような気配が窺えるのだった。
 そして補陀落(ポータラカ)星人ムウルの魂を宿す石川星之介はもう一人の補陀落星人・主君ナガルを探し求め、宮比羅(クビラ)の日天の根拠地・越後高田へと向かう。日天は今では小太郎と呼ばれるナガルを崇め、全鬼道の総帥に据えようとしていた。
 一方京都西郊の荒れ寺では、ふたりの異星人を追う宇宙よりの刺客が白光と化して業病の乞食に乗り移る。第三の外道皇帝の誕生。不可侵の存在である彼は闇の旦那と呼ばれ、巨盗・闇の重蔵や怪円盤を使いナガル達の命を奪おうと目論む。
 さらに鬼道衆と繋がりを持ち、キリシタン同様時の政権から過酷な弾圧を受け続ける日蓮宗不受布施派の師弟・日円と青円は、生駒山中で昇月斎なる怪人に〈外道皇帝がまもなく江戸でよみがえる〉という予言を伝えられる。千年の昔に一度死んだ皇帝はみずからの胤の中にひそみ、因果律を操ったのちまったく同じ存在として再誕するのだ。役目を終えた昇月斎は「母の名はヒサエ」との言葉を最後に、隕石に撃たれ肉片と化した。
 その頃江戸では、日天を裏切り因陀羅(インダラ)の信三郎に付いた郁方門・迷企羅(メギラ)の静海が、胎内道探索行に送り出した俊策の妹・桜井久恵と結ばれていた。だが彼らは、自分たちの恋が外道皇帝に操られた結果であることを知らない・・・
 (二)巻は雑誌「小説CLUB」昭和四十九(1974)年九月号から、昭和五十(1975)年八月号連載分まで。時代背景としては田沼意次長男・意知誕生の寛延二(1749)年から、大御所徳川吉宗が臨終する寛延四(1751)年まで。意次満三十歳、まだ飛躍とまではいきませんが、若手筆頭として順調に出世街道を突っ走っている頃。
 薩摩では地獄の花と呼ばれる凶花〈泥食い〉が咲き誇り(正体は竹の花)、あいつぐ天変地異と大飢饉の訪れを告げています。作中では泥食いはしだいに北上し五~十年で関東まで到達するとされ、一揆侍・栗山は民の為、その前に江戸幕府を倒壊させんと焦ります。他方では世の乱れを知り鬼道衆がほくそ笑む。田沼に食い込む平田屋藤八と、西の丸老中・松平武元を背景にする黒金屋正五郎。各政商を道具に使う信三郎と日天の争いもまた、激化の一途を辿ることに。
 テンションMAXの前巻から二、三歩引いて、登場人物たちを転がすことに集中した仕切り直しの回。助走期間を過ぎたのち、物語は再び加速していきます。

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