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ミステリの祭典

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欺す衆生

作家 月村了衛
出版日2019年08月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 HORNET
(2020/04/12 17:26登録)
 高齢者を騙し莫大な利益を得ていた詐欺グループ「横田商事」は、その悪質な商法が社会問題化し、マスコミの眼前で会長が刺殺されるという衝撃的な形で壊滅した。元社員の隠岐はその過去を隠して文具会社で働くものの、うだつの上がらぬ日々。そんな折、元・横田商事の同僚、因幡が隠岐に接触してきた。「また一緒に詐欺をやろう」—強く拒否をする隠岐だったが、心のどこかでは込み上げてくる高揚感があった—

 「もう二度と汚い真似はしたくない」と口では言いながら、策略を練って人を嵌める快感を忘れられない主人公。始めは「因幡に脅されているから仕方なく」の体だったが、罪を重ねていくうちに泥沼にはまり、どんどん主体的に詐欺を働くようになる過程が色濃く描かれている。因幡やヤクザらに引きずられるようであったのが、最後には彼らをも裏切り、詐欺師として孤高の存在になっていく。
 複線として描かれている家庭の確執も物語に幅を持たせ、面白さを後押ししている。最後に「救い」に向かうようなことも一切ない、徹して「悪」を描いている点が小気味よい。

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