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ミステリの祭典

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配達されたい私たち

作家 一色信幸
出版日2008年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2020/04/12 22:36登録)
感情を喪失したうつ病の澤野は、ある日、死に場所として入った廃墟で、偶然手紙の束を見つける。それは昔郵便局員に破棄されたものだった。「この7通の手紙は、さようならへのカウント・ダウンだ。すべてを配達し終えたら肚をくくろう」彼は死とその痛みを先延ばしするため、7年前の手紙の配達を始める。そしてそこに込められた悲喜劇に遭遇し、久しぶりに心の揺らぎを感じるが…。神経症の時代に贈る、愛と希望の物語。
『BOOK』データベースより。

作者は『私をスキーに連れてって』『木村家の人々』などの脚本を手掛けた脚本家で、小説家でもあります。氏はかなり重いうつ病を患った経歴があり、この作品ではその経験を生かして、その症状やうつ病患者の内面を抉るように描いており、とてもリアリティがあります。主人公が鬱だけあって、非常に重い作品に感じます。しかし、何か分かるなあとも思いますし、そんなに酷いものなのかという気持ちにもなりますね。

それでも、どこからそんな気力が湧いてくるのか、死することへの決意の表れなのか、随分苦労して7通の手紙を配達してく姿には違和感を覚えます。それだけのことを成し遂げようとする人間が、本当に鬱に苦しみ死を切望するのかとの疑問も覚えます。
7人の手紙の受取人にはそれぞれドラマがあり、それだけでも楽しめはしますが、タッチが軽いのに内容が重いという、アンバランスさが読者を不安定な気分に誘います。エンターテインメント小説として優れていると思いますが、気持ちよく読み進めることはできないかもしれません。
結末は微妙で、救いがあるのかないのか意見が分かれるところだと思います。

余談ですが松竹さん、映画『ほんの5g』のブルーレイ、DVD化を切に希望します。

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