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ミステリの祭典

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ゴールデン・オレンジ

作家 ジョゼフ・ウォンボー
出版日1996年11月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 人並由真
(2020/04/09 04:51登録)
(ネタバレなし)
 エイズが世界中に蔓延した時代、1980年代の後半~90年代の前半。アメリカのオレンジ群ゴールデンコーストは住宅街を主体にした世界有数の港町で、かつてはジョン・ウェインの邸宅などがある土地だった。そこに暮らす40歳の元警察官ウィニー・ファローは、捜査中の負傷で退職。今はわずかな年金とフェリー操縦の非常勤勤務での収入を頼りに、酒に溺れる日々だった。だが深酒が過ぎて海難事故を起こしたウィニーは、厳しいことで有名な黒人判事シングルトンの温情で、ぎりぎりのところで厳罰を免れる。そんな彼が出会ったのは、美貌の熟女テス・バインダー。ほぼ文なしのウィニーだが、実は彼女も亡父の遺産の案件で問題を抱えていた。だがウィニーが、恋人となったテスのために改めて遺産の実情を調べていくと……。

 1990年のアメリカ作品。日本では1996年11月に早川書房からハヤカワ・ノヴェルズのハードカバーとして刊行。文庫版などは無し。

 父親が遺した遺産はもっと多額のはずなのにあまりにも少な過ぎる、と疑念を抱いたテスの不満を受けて、ウィニーが遺贈された土地の現地に赴くと、何者かが遠方から銃撃。さらに昨年、自殺したとされるテスの父の最期にも不審が生じ、物語の中盤からじわじわと少しずつミステリ味が感じられるようになってくる。
 それでも物語が動いては、また主人公コンビののんきな(?)調査が再開、この繰り返しだなあ……とたかを括っていると、あわわわわ……終盤で意外な方から切り込んできた。軽くショック。
 いや、一番のサプライズそのものは見え見えだけど、しかしながらそれを前提にこういう方向の小説のまとめ方をするのかと息を呑んだ。「驚きと感動のクライマックスが待っている」というカバージャケット折り返しの惹句は、……ん、まあ、ウソではなかった。とはいえ、もしかしたら……(中略)。

 まあこれ以上あんまり書けないし、一方で前述のとおり、ある程度までは読者の方も読める部分もあるけれど、先に紹介した惹句の<驚きと感動のクライマックス>とは、ああ、こういうこと……と感銘を受ける人も多いのではと思う。
 本作のミステリのジャンル分類は、版元の表意通りに「サスペンス」でいいと思うけれど、最後の最後での勝負球はむしろ(中略)であった。さすが強打者のウォンボー、今回もお見事である。

 ちなみに巻末の訳者あとがきは、ちょ~っと余計な事を言い過ぎているかもしれない。できれば作品の本文を読んだ後に目を通した方がいいでしょう。

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