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ミステリの祭典

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仮名手本殺人事件
劇評家ライター・海神惣右介

作家 稲羽白菟
出版日2020年02月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点
(2021/08/10 15:30登録)
この作家の名前って、と思っていたのですが、福山ミステリー文学新人賞の準優秀作のデビュー作『合邦の密室』についてのインタビューを聞くと、やはり「因幡の白兎」を意識しているんですね。「菟」も「うさぎ」と読みます。
そんな神話由来の名前を選ぶだけあって、作者は古典芸能に造詣が深いようで、デビュー作は文楽をテーマにしていたそうですが、この第2作は歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』。舞台上で主役の役者が毒殺される派手な事件の割に、その後の展開や文章は、古典芸能好きな作者らしいじっくり落ち着いたものになっています。蝙蝠形の痣が頬にある男が登場したりして、それもただのこけおどしでないことが次第に明らかになって来るあたり、上方歌舞伎の名門吉岡家の過去の複雑な人間関係とともに、横溝正史の世界を連想させます。不可能犯罪等のトリックではなく人間関係の秘密で読ませてくれる作品です。

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