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ミステリの祭典

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野望のラビリンス
私立探偵・鈴切信吾シリーズ

作家 藤田宜永
出版日不明
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点
(2020/04/07 13:53登録)
のちに恋愛小説家に転向した直木賞作家、藤田宜永氏のデビュー作です。
この鈴切信吾シリーズは残念ながら、本作と次作の『標的の向こう側』の2作で終わっています。彼の作品にはフランスでの経験を生かしたものが多く、本シリーズ作品もその代表的な作品といえるでしょう。

「フランス国籍を持ち、パリに住む邦人探偵・鈴切信吾。ある日、彼のもとへ奇妙な依頼が舞いこんだ―「猫を探して頂きたいのです」。だが彼を待っていたのは、猫を預かったまま失踪した男の死体であった。一体誰が、何のために。男の過去を手繰る他はなかった。男娼がいた。画廊の経営者夫妻がいた。淫売とヒモがいた。やがて鈴切は第二の殺人事件の渦中に巻きこまれ、そしてパリの裏街に潜む深遠なる情念の迷宮の只中にいるのを知った―。爛熟の都を舞台に綴る本格ハードボイルド。」(BOOKデータベースより)

ハードボイルド小説として雰囲気や語りを楽しむといった感じはあまりなく、フランスらしさもそれほどではないが、エンターテインメント作品としての価値は高いように思う。
事件にはいろいろな背景があり、やや駆け足気味に話しは進むが、その分場面に変化とスピード感があり、読者を飽きさせることはない。

読者が謎解きに参加できる本格ミステリーとはいえないものの、多くの謎があり、ミステリーとしてのオチに工夫もあり、個人的にはお気に入りの作品です。
ただ、久しぶりの再読では、先日読んだ『さもなくば友を』よりも、お気に入り度はやや落ちるかもしれません。

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