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ミステリの祭典

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負けた者がみな貰う

作家 グレアム・グリーン
出版日1956年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2020/03/30 20:57登録)
グリーンやらなきゃ、と思っても、意外に古本が転がってないんだね。もうちょっとリキ入れて探そうとは思ってるんだが....「密使」とか「おとなしいアメリカ人」とか「ハバナの男」とか、早くやりたいよ。で、転がっていた本作を手に取った。
まあこれ、グリーンでも純文じゃなくてエンタメで、コミカルでシニカルな恋愛喜劇。こんなのも書けるんだなあ。中年会計係の「ぼく」はケアリーとの結婚を控えていたが、勤め先の「大物」の気マグレに付き合わされて、モンテカルロで結婚式を挙げるハメになった...その「大物」はなかなか二人のもとに来ない。豪華リゾートでお金に困りだした二人は、一発逆転を狙ってカジノに赴くが、「ぼく」の意外な数理の才?が発揮された「システム」によって、大儲けをしてしまう。しかしそれが「ぼく」と新妻ケアリ―のスレ違いの始まりだった!金持ちになった「ぼく」なんて、ケアリーにとっては魅力ゼロなのだ....二人ともアテつけるように別な男女を寄せ付ける。そのころようやく「大物」がモンテカルロに到着し、年の功で「ぼく」にあるアイデアを授ける...
という話。まあセンチメンタルで陽気な上出来なオハナシ。「大物」の策はなかなか気が利いている。「カトリック作家」というのを意識しすぎるのも何かもしれないんだが、やはり賭博というものには形而上学的な味わいがあるものだ。賭博狂のパスカルの話がよく引き合いにだされるわけだけど、「神の存在を賭けによって問う」護神論を連想するのは仕方のないことだ。神なしに自身の才知で「システム」を作り儲けた「ぼく」は、それを通じて「本来のぼく」=ケアリ―からずっと離れてしまい、帰ってきた「神」=「大物」が授けた「賭け」を逆用した「策」によって自分と和解する話、とか読んでもおかしくなんだろうね。賭博にハマる、こんなバカな「ぼく」に可愛げがあるしねえ。
まあ、それにしても、気が利いた話には違いない。「大物」の策がなかなか秀逸だから、それでもトンチの効いた最広義の「ミステリ」に入るかな。

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