愛の囚人 |
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作家 | ユベール・モンテイエ |
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出版日 | 1967年01月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | |
(2020/03/13 05:44登録) (ネタバレなし) 1963年9月のイスタンブール。ヒルトンホテルに滞在していた「わたし」こと弁護士ジャン・カルパンは、電報でパリに急遽呼び戻される。パリでは15年来の旧友で名家の息子、そして現在は国務次官のオレスト・レアンデルが新妻クレール・アルヌーを毒殺した嫌疑で逮捕されていた。カルパンとオレストの交際は密接な時期もあればほぼ疎遠な期間もあったが、彼の最初の妻デュボン・ド・ヴリクールが事故で死亡、そして先の妻だった美女クロードもまた62年6月に一人旅の最中に交通事故で死んだことはもちろん聞き及んでいた。自身の潔白を訴えるオレストだが、やがてカルパンの前に、意外な隠されていた事実が。 1965年のフランス作品。モンティエの長編第四作目で、紙幅は約130ページとかなり薄く二時間もかからずに読めてしまう。 独特の恋愛観、結婚観、女性観を持つ主人公オレスト(といっても別段そんなにイカれたものでもないが)と、さる劇中ヒロインとの奇妙な? 関係性が主題の作品(まあギリギリ、ここまでは言っていいだろう)。 限りなく普通小説に近い手応えであり、読んでる内はくだんのメインヒロインに対して「こういう女も現実にいるのかなあ、いないだろうなあ、しかしまあいるかもしれないし、いたらある意味面白いなあ」的な、けったいな感興を覚えた(笑)。 妙なキャラクターの登場人物たちが織りなす人生喜劇? という言い方をするなら、前に読んだ同じ作者の『悪魔の舗道』と同じだが、今回は少なくとも、話に乗れた分だけ、そっちよりはマシ。最後、いかにもという手際でミステリのフィールドに転調するのもなんか微笑ましくってよい。まあ文芸味がそこそこ活きた、佳作というところで。 ※追記:少し前に送られてきた「SRマンスリー」によると、作者は昨年5月12日に亡くなられたそうである。享年90~91歳。邦訳は7冊。今回のレビューは特に追悼を意図したものではないけれど、ご冥福をお祈りします。 |