home

ミステリの祭典

login
家族パズル
改題『神様の思惑』

作家 黒田研二
出版日2019年12月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 4点 ミステリーオタク
(2024/10/24 20:26登録)
 ヒッサビサに手に取ってみたクロケン著作(Killer X 四部作とか懐かしいっ)。もう作風とかも大部忘れてしまっているし、多分短編集は初めて。 尚自分が手にしたのは改題後の「神様の思惑」の方。

 《はだしの親父》
 うん、コレ系ね・・・悪くはないけれどコレ系としてはまぁ普通かな。

 《神様の思惑》
 う~ん、どうやらこの短編集はコレ系でまとめてくるらしいな。好きな人には好短編集になるだろうが、自分はコレ系を連続して読まされるのはチョッとねー。

 《タトゥの伝言》
 前二作よりはドロ味があるが展開の必然性は乏しい気がする。

 《我が家の序列》
 ミステリとしてのそれなりのネタはあるが、何と言うかまぁワンピース・・なんてね。これも悪くはない。

 《言葉の亡霊》
 二つの時系列で進み少し混乱させられ気味になるところもあるが、巧みに仕立てられたファミリーミステリ。


 くどくて申し訳ないが全編「悪くない」5話からなる短編集。幅広い読者層にオススメできると思うが、もし自分が読む前に「こういう短編集」だと知っていたら手を着けなかったかもしれない。

 (以下未読の人は読まない方がいいと思われる感想)
 
 表題作以外は家族愛をテーマにした「感動するでしょ」系ミステリ。表題作も家族愛ではないが「神様のような御慈悲に感動すべき」ミステリ。
 決してバカにしているわけではない。
 端的に言うと作りが全体的に童話的、つまり子供向けの寓話集のような印象を個人的には受けたということ。大人が読んでもそこそこ楽しめるとは思うが社会に擦れた層がコレにどれだけ感動するかは甚だ疑問。
 要するに「大人のスパイス」がギンギンに効いているミステリが大好きな自分にはイマイチだったというだけの話。

No.1 6点 人並由真
(2020/03/03 12:43登録)
(ネタバレなし)
「家族」を主題にした、ヒューマンミステリの連作集(とはいえ設定も登場人物も全部バラバラだが)。「ジャーロ」に掲載の3編、「メフィスト」に掲載の1編、書下ろしの1本の編成で、全部で5本の短編が収められている。

 黒田作品はまだ長編を3冊読んでいるのみで大きなことは何も言えないが、処女作『ウェディング・ドレス』から随分と遠くにきたものだという感慨の一端を覚えたりする。
 言い換えれば黒田作品らしさ? はあまり感じず、21世紀国内の筆の立つ現役作家ならよくも悪くもかなりの面々が書けそうな手応えもあるが。

 それでも全5編の内容は、おおむね佳作~秀作以上。こういう傾向の作品はたまに補充したくなるので、その意味では快く読めた。
(ただし巻頭の『はだしの親父』はミステリとしては、ここで提示された謎の答えを気づかない人間は100人の読者がいて100人ともいないだろという印象だが。その点では、ある意味でスゴイ作品であった。)
 ベスト編は『神様の思惑』と『家族の序列』がツートップ。それに最後の『言霊の亡霊』が続く。

 黒田研二に今後もこういう路線のヒューマンミステリをお願いします、と書くのは、O・ヘンリーベースの作風に傾倒していった時期の赤塚不二夫に「これからも悲しい悲しいおそ松くんを描いてくださいね」とファンレターを送り、赤塚当人に爆笑された女子高校生(実際にそういう人がいたそうである)のような感じだが、まあ、これはこれでいいのだ。 

2レコード表示中です 書評