刑事ファビアン・リスク 顔のない男 刑事ファビアン・リスク |
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作家 | ステファン・アーンヘム |
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出版日 | 2016年10月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | tider-tiger | |
(2020/02/29 13:50登録) ~ファビアン・リスク刑事はストックホルムを離れ、生まれ故郷であるヘルシンボリに家族を連れて戻ってきた。ひと月ほどゆっくり休んでから地元の警察署に赴任することになっている。だが、引越しすら終わらぬうちに未来の上司アストリッド・トゥーヴェソンの訪問を受ける。殺人事件が発生したという。仕事なんてイヤだ便所と思っていたファビアンだったが、被害者の遺体の脇に置かれていた写真を見せられて驚愕する。学校のクラス写真。ファビアン自身も写っている。そして、そのうちの一人の顔に×印がついていた。被害者はかつてのクラスメイト、ヨルゲンポルソンだった。~ 2014年スウェーデン。作者のデビュー作にして本国スウェーデンでは大ヒットした作品。帯には『皆殺しという名のクラス会』と仰々しい文句が。だが、スウェーデン版『バトルロワイヤル』……ではない。 ファビアン・リスク刑事のかつてのクラスメイトが一人ずつ殺されていく。類似作品がいくらでも転がっていそうな手垢のついたネタではあるが、翻って魅力的なネタでもあるのだろう。 ケレン味あって面白いが、粗が多い。読者の興味を持続させるのはうまく、リーダビリティは充分にある。ミスリードを誘う仕掛けも悪くない。「ファビアンが犯人かも」という線をもっと強く押し出せばよかったのにと思った。 北欧らしさはあまり感じなかった。女性警視がまったく特別視されていないところなんかは北欧的……なのかな? テイストがもっともよく似ていると感じた作家はピエール・ルメートル。あとがきにもルメートルを感じさせると書かれていた。ただ、ルメートルと比べるとキャラの立て方がいまひとつ。 人物をしっかり描こうという姿勢は見られ、ファビアンの家庭問題などに筆が割かれるも、あまりうまくいっていない。主人公の対応の悪さや同じことの繰り返しが目立ち、無駄に分厚い一冊となってしまった気がする。 それから刑事のミスが多すぎる。捜査側のミスはときに物語を大いに盛り上げるが、本作の場合は質量ともに大きなミスの連発でちと呆れてしまった。 動機はある意味すごい。この動機に説得力をもたせることができれば素晴らしかったのだが、本作は正直なところ少し笑ってしまった。 動機と少し関連することで、物語の骨子というか着想は日本の某有名漫画ではないかと感じた。あの漫画もちょっとそれは無理があるのではと思った部分あるが、本作も同じ轍を踏んでいる。 エピローグは高評価。こういう閉じ方をしちゃうのね。 なんだかんだ言いながらも面白かったし、次作、次々作に向けていろいろ伏線が張ってあったし、のびしろはありそうなので、次作に期待しての6点。 ※四年に一度しかないニンニクの日を記念してニンニクにちなんだ作品を書評したかったのですが、ニンニクミステリは手持ちにありませんでした。残念です。主人公の名前がガーリックというのはあったのですが……。 |