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ミステリの祭典

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悪意の波紋

作家 エルヴェ・コメール
出版日2015年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 tider-tiger
(2020/02/27 00:14登録)
~ジャックはかつての同級生たち五人で渡米、とある屋敷からマネの絵を強奪、持ち主に身代金というか物代金を要求してたんまりと稼いでフランスに戻った。ところが、後になって自分たちがとんでもない人間から金を奪ったことを知る。ビクビクしながらもそれなりの人生を送っていたジャックのもとに40年も経ってから一枚の写真が届く。かつてのクラス写真。写真はマネを強奪した五人の仲間の顔に〇がつけてあった。
イヴァンは別れた彼女に未練たっぷりの若者だった。その彼女が一躍有名人になり、こともあろうかイヴァンが彼女に送ったラブレターの内容をTVで公表して彼を笑いものにしようとしている。イヴァンは彼女の家からラブレターを強奪しようと目論む。
やがて二つの事件が絡み合い、奇妙な様相を呈していく。~

2011年フランス。前に書評した『その先は想像しろ』の一つ前の作品にしてその原型のような作品。こちらもそれなりに面白い。ちょこちょこと意外な展開があって、一つ一つのエピソードもそんなに悪くない。ただ、改行少なめ文章短めで攻め立ててくる語りがまだまだこなれていないのと、イヴァンパートに無駄が多く、配分が失敗だったような。イヴァンパートを少し減らして、ジャック、もしくはその周辺にもう少し力を入れた方がよかったと思う。あまり例を見ない奇妙な構成で最後に繰り出される大技も、どうにも不発気味というか、バカミスのようでバカミスではない感じがいただけない。
奇妙な読み味とウナギのごとく捉えどころのない筋運びに個性を感じるが、次作と比較するとずいぶん落ちる。ただ、この作者にはなにか感じるものがあった。文章で勝負しようという気概(あまりうまいとは思わなかったが)、なにかに挑みかかる気持ちを感じた。だから次作も読み、それは正解だった。次も楽しみだ。次は出るのか?

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