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ミステリの祭典

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論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集
有栖川有栖

作家 評論・エッセイ
出版日2019年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 人並由真
(2020/02/24 03:16登録)
(ネタバレなし)
 またここのところ忙しくなって、読みたい本(特に新旧の長編ミステリ)が読みたくても読めないミステリ中毒者(現状の評者のこと)の渇を癒やしてくれた一冊。眠る前に少しずつ読んで(時には興が乗ってそれ以外の時も手に取り続けて)何日かかけて読了した。
 本書は、他者の著作の文庫などの巻末に有栖川有栖が書いた解説を集成したもので、『Xの悲劇』や『点と線』などの旧作・名作から21世紀の国内外の新作群まで60本以上の文章がまとめられている。

 実作者かつミステリファンとしての胸襟を開きながら、各作品や作家の魅力・個性に触れていく語り口はひとつひとつの文章が実に心地よく、大昔に『深夜の散歩』や『夜明けの睡魔』さらには石上三登志の『男たちのための寓話』などを読みふけった際の快感に近いものを受け取った。
 とにかく未読の作品の大半を読ませたくなる口上の見事さは絶品である。

 とはいえこれだけの数の同系の文章をまとめて読まされるとどうしても綻びが出てくる感もあり、たとえば『致死量未満の謎』と『闇に香る嘘』なんか続けて載っているけれど、両作品の新人賞(乱歩賞は厳密には新人賞ではないが)受賞までの選考経過についての肯定の仕方なんか、ものの見事にダブルスタンダードの物言いじゃないの? とも思う。
 そういう意味では、頭のいい人が口先で作品を褒めあげる解説というきらいも無くもなく、商業原稿とミステリファンによる原稿との兼ね合いの落しどころに限界を感じてしまった部分もあった。
 まあ、ミステリ作家としてもミステリファンとしても異才の有栖川有栖でなければ、これだけの解説をまとめて読まされた際には、もっともっとあちこちに評価のスタンダードにおける破綻が出ていたこととは思うが。

 なんにせよ、前から気になっていた作品でさっさと読みなさいよと背中を押されたタイトルも、初めて書名を教えられて面白そうだと意識してタイトルもいっぱいあった。追々、読んでいきたいと思います。

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