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ミステリの祭典

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放たれた虎
<泥沼の家>シリーズ

作家 ミック・ヘロン
出版日2017年09月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 びーじぇー
(2020/02/19 20:08登録)
<泥沼の家>の一員、キャサリンが何者かに誘拐された。同僚のリヴァーは、犯人からの連絡を受ける。彼女の身の安全と引き換えに、保安局の本部に保管されている極秘ファイルを盗み出せ。それが犯人の要求だった。
物語の全貌がなかなか見えないまま進む五里霧中の展開は、第一作、第二作と同じ。主人公たちの属する<泥沼の家>を脅かす誘拐犯たちは必ずしも一枚岩ではない。また、保安局の内部で繰り広げられる密やかな権力抗争のせいで、<泥沼の家>から見れば保安局本部もある種の「敵」。やがて事態の構図が明らかになっても、先の見えない展開は続く。また、一癖も二癖もある登場人物もこの翻弄する物語を支えている。
読み終えてから振り返ってみると、極めて緻密に構築された物語であることが分かる。何の関係もなさそうなエピソードが、忘れたころになって大きな意味を持つ。仕掛けられたいくつもの伏線が、次から次へと鮮やかに回収される。
ぜひ過去の二作と合わせて、本書を楽しんでいただきたい。作者に手玉に取られる快楽を、堪能できるはず。

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