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ミステリの祭典

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サディーが死んだとき
87分署

作家 エド・マクベイン
出版日1974年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 tider-tiger
(2020/02/09 20:31登録)
~弁護士のジェラルド・フレチャーから、帰宅したら妻が死んでいたとの通報を受けて現場に駆けつけたキャレラ刑事だったが、フレッチャーは平然と言い放った。
そいつが死んでくれてせいせいしているよ。
物盗り目的で窓から侵入した何者かがフレッチャーの妻を刺したのではなかろうか。この線が有力であったが、キャレラはフレッチャーに疑惑を抱く。そんなキャレラになぜかフレッチャーは自ら接触を試みてくるのであった。~

1972年アメリカ。刑事コロンボみたいな幕開けから、つかみどころのない展開を経て、他愛もない結論に落ち着くのではありますが、心理ミステリとしてよくできている作品だと思います。曖昧な部分もありながら、なぜか腑に落ちるのです。
被害者のノートに書かれた『TG』の意味が判明したとき、これも他愛のないことではありながら、あまりにも……いやあいいなあ。
さらに本筋との直接的なからみはないものの、サブストーリーが作品に微妙な影を投げかけております。マイヤーとクリングの肩こり治療用ブレスレットをめぐるアホらしい諍いも楽しい。どうでもいいことをくどくど書いたり、肝腎なことは匂わせるのみだったり、どこかヘミングウェイっぽかったり、いくつかの文体を混ぜ合わせたりと相変わらずやりたい放題ですが、本作はそれらがうまく融合しているように思います。やっぱりマクベインはいい。
好き嫌いが分かれそうな作品ではありますが、個人的には『死にざまをみろ』と並ぶ87分署の裏名作にしてマクベインのベスト5入り作品です(カリプソ以降の後期作は未読なのですが)。ジャンルはサスペンスとしました。

『われらがボス』の書評の中で同時期に出版された四つの作品を挙げて、いまいちだと書きましたが、本作はその時期に書かれています。なぜか本作だけは完成度が段違い。不思議です。
※ショットガン(1969)、はめ絵(1970)、夜と昼(1971)、サディーが死んだとき(1972)、死んだ耳の男(1973)

別作品に登場するキャラで、何者かにレイプされたという狂言を繰り返すサディという迷惑なお婆さんがおります。本作を初めて読んだとき、このお婆さんが殺されてしまう話だと思っておりました。けっこう好きなキャラなので非常に悲しくなりました。もちろん本作のサディーはまったくの別人です。

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