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ミステリの祭典

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カーペンターズ・ゴシック

作家 ウィリアム・ギャディス
出版日2019年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2020/01/28 10:20登録)
全米図書賞を受賞したウィリアム・ギャディスの、「一体、誰が訳せるのよ」的メガノベル「JR」の訳出で、第5回日本翻訳大賞に輝いた木原善彦。その木原が2000年に訳し、このたび改訳復刊された小説が、この作品だ。
古いゴシック様式の館が舞台で、全編のほとんどが、会話で成立している。中心人物は、賄賂のやりとりが暴かれそうになったため自殺した鉱業界の大物の娘エリザベスと、その夫ポール。賄賂の運び屋をしていた彼は、金目当てでエリザベスと結婚したのだ。ところが、遺産はアドルフという男が管理するよう委託されており、手を出すことができない。ヤマ師気質のポールはメディアコンサルタントとしての成功の夢を見て、さまざまな胡散臭い事業の立ち上げに関わって、ちょこまか動き回っている。
ひっきりなしにかかってくる電話。怪しい男たちの来訪。事情が分かっていないエリザベスは、ただただ翻弄され、ポールはそんな妻に苛立ち、ひどい言葉をぶつけ続ける。2人の不毛なやりとりが中心となる物語の中に、館の家主やエリザベスの弟の思惑まで絡んできて、やがて巨大利権をめぐる世界的陰謀へと話は広がっていくのだ。
読み始めは会話中心の語り口にとまどうけれど、愚行につぐ愚行の全容が明らかになっていくにつれ、笑ってしまうこともしばしば。悲劇と喜劇は表裏一体という読み心地が味わえる。描かれているのが今日的な問題でもあるので、初訳の19年前よりも今の時代に響く小説と言え、お薦めだ。

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