休日はコーヒーショップで謎解きを |
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作家 | ロバート・ロプレスティ |
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出版日 | 2019年08月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | |
(2020/01/20 02:21登録) (ネタバレなし) 2018年に翻訳刊行された、ミステリ作家を主人公にした小粋な連作短編集『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』の作者ロプレスティ。その著作でノンシリーズものを中心とした短編8本、中編1本という構成の個人作家作品集。編集は日本オリジナル。 短編8本はそれぞれサスペンスものとクライムストーリーを主軸にバラエティに富んだ内容で、60~80年代のミステリマガジン(日本版EQMM)、または日本版ヒッチコックマガジンに載った翻訳ミステリのショートストーリー諸作のような味わい。都筑道夫の『ひとり雑誌』の域にはさすがに行かないが、人間ドラマや密室劇もあれば意外な犯罪の実体の事件などもあり、個人作家としてはなかなか持ち技が多くて楽しめる。 昔はこういう幅広い作風のしゃれた海外短編ミステリがその月の「マスターピース(選抜傑作短編)」の肩書きのもとに、ミステリマガジンでほぼ毎号、1~2本は読めたものだった。 海外ミステリの本国版専門誌を読みこんでそのなかから日本読者向けの傑作編を選び、版権をとって翻訳する工程が面倒くさくなり、国内にあふれている有象無象の日本人ミステリ作家に実作を発注してお茶を濁している現行の「見捨て理マガジン」の誌上では、こういうものが安定して供給される機会はもう二度と来ないのである(涙)。 閑話休題。本書に収録された各編には、作者ロプレスティからのそれぞれ思い入れを込めた自作へのコメントが付加されている。そのコメントのなかのひとつで、作者が昔から私淑していた作家のひとりがジャック・リッチーだった事がわかり、さもありなんという感じであった。本書を読み進める最中、評者が感じたある種の懐かしさの正体は、きっとこの辺にあるのであろう。 なお巻末をしめる中編は、今後のシリーズ化を意識した、スタウトの作風に寄せた都会派パズラー。ネロ・ウルフのファンクラブに長らく属している作者が同組織内で設立した中編作品賞に合わせて書いたものだという。 それまでの8本が凝縮された短編ミステリの醍醐味をしっかり味合わせてくれた分、作品の形質がここでいきなり変わってしまって戸惑い、途中で読むのをストップしてまた最初から読み直したりもした。ストーリーそのものは時代設定を1958年に据えた独特の興趣があるもので(映画『めまい』が封切られた直後で、テレビでは『探偵マイケル・シェーン』などが放映されている、ある意味で旧作ミステリファンにとってのベル・エポック)、犯人捜しの段取りも最後まで読めばなかなか楽しかったけれど。 この雰囲気ならもう何冊か、ロプレスティの翻訳短編集を作れそうな感じだな。しばらくしたら是非ともまた続刊を出してほしい。 |