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ミステリの祭典

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怪人オヨヨ大統領
オヨヨ大統領

作家 小林信彦
出版日1972年05月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 クリスティ再読
(2020/01/06 09:27登録)
評者の都合で、夏休みに「オヨヨ島の冒険」をやって、冬休みに「怪人オヨヨ大統領」をやるのは「キチガイじゃが仕方ない」。ジュブナイルのオヨヨ大統領シリーズの第二弾で、大沢ルミちゃん(小6)の夏休みの大冒険。初出は伝説の「サン・ヤング・シリーズ」。
今回はズビズバ国からの亡命者・ジャンジャン姫の依頼で、パパがノリで銀行から姫の絵画を盗み出すのに成功するのだが、これはオヨヨ大統領の大沢親子への復讐の陰謀だった!大沢親子とジャンジャン姫は、私立探偵サム・グルニヨンに助けを求めて、メイ探偵グルニヨンとオヨヨ大統領、それにズビズバ国の独裁者ワル・ノリの三つ巴の戦いが始まった!
という話。鬼面警部と旦那刑事は本作が初登場。鬼面はグルメでそばが大好き。グルニヨンはマルクス兄弟がモデルだが、子どもにゃモデルはわからんよ。でも評者とかしっかりマルクス兄弟、って名前は刷り込まれたなあ。ジャンジャン姫のネーミングは三島由紀夫の「暁の寺」に登場するタイの王女で転生者のジン・ジャン姫が由来。これだって子供は知るもんか。でワル・ノリはカンボジアの陥落時の首相ロン・ノル。

「そうか。....しかし、物語の登場人物が一堂に会するというのは、古風で、よきものだな。ロマネスクですらある」
オヨヨは皮肉な笑いを浮かべた。
「むかしのフランスの小説なら舞踏会、いまはジャンボジェットか」

と敵味方呉越同舟で飛行機に乗って、オヨヨがなかなか知的でシックな感想を言うと、当時流行中のハイジャックに...

ニッポン名物 とっても シックなハイジャック
拳銃(はじき)はつかわず 刀がひとふり
ゆかいじゃないか
ぼくの好きな あの赤軍派
きょうは まだ こないけど
きっと かれらは きてくれる
雨の降る日も 風の日も...

とハイジャッカーのCMソングだって、ある。このマルクス兄弟チックな能天気コメディミュージカルな世界がすばらしい。子どもも細かいことはわからんくてもノリよく楽しめて、オトナは細かいクスグリに爆笑しつつ童心に帰れる素晴らしい小説。世界はかくも冒険に満ち溢れている!

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