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ミステリの祭典

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プロレス連続殺人事件

作家 三谷茉沙夫
出版日1985年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2020/01/04 16:16登録)
(ネタバレなし)
 1980年代の半ば。新日本プロレスと全日本プロレスの二大勢力を頂点に、群雄割拠の様相を呈し始めた当時の日本プロレス界。比較的規模の大きい新興団体「ワールド・プロレスリング」の中堅レスラー、ジャガー・大城は、プロレスラーとしてのさらなる躍進を図っていた。大城を応援するのは、恋人でOLの広瀬有美と、夕刊紙「オールスポーツ」のベテラン記者、馬場。興行をより盛り上げるために日々奮闘するワールド・プロレスリングの所属レスラーたちだが、そんなある日、彼らの仲間の一人が自宅で何者かに殺される事件が起きる。やがてしばらくして、思いもよらない状況の中で第二の惨事が……。

 作者・三谷茉沙夫(みたに まさお)は1970年代から活躍した著述家。エンターテインメント小説から歴史読み物本まで幅広い活動を為したが、ミステリ関係では初期は「コロンボ」シリーズの和製ノベライズ数冊(「訳者」名義で出した『死者の身代金』『死の方程式』ほか)を手がけたのち、80年代にはオリジナルの実作にも進出。本作はその三冊目になる。

 例によって、webで目に付いた愉快な題名(笑)と、Amazon古書価の高騰ぶりに興味を惹かれて、借りて読んだ。

 それでも一種の業界ものとして、当時のプロレス界の躍動を語る筆致にはかなりの熱気と真剣味があり(たぶん作者の得意なフィールドなんであろう)、主人公のジャガー・大城の視点や三人称の記述を介しての斯界への見識ぶりやトリヴィアの羅列はけっこう読ませる。プロレス小説としての成分が全体の5分の3くらい。
 一方でミステリの部分は一応はフーダニット、ハウダニットのパズラー。最初の殺人に関しては既存トリックの流用だし、さらにそんなに犯人の思惑どおりに行くかな? 検死でバレない? などの不満は感じるが、伏線の張り方の妙な手際は、ちょっと印象に残るかも。
 それなりにまとまっている、特殊な世界を舞台にしたB級ミステリだとは思うが、後半のストーリーの展開がエンターテインメントとしてどうなの? という感じなのが残念。まあそれで作者の言いたいこと、やりたかったことも何となく分からないでもないが、書かれた筋立ての(中略)は最終的にそれに釣り合ったかどうか。

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