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ミステリの祭典

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死に金稼業
志田司郎

作家 生島治郎
出版日1990年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2019/12/26 20:54登録)
(ネタバレなし)
 おなじみ私立探偵・志田司郎ものの連作短編集(何冊目だ?)で、読みやすい長さの7本の事件簿を収録。評者は文庫版で読了。

 全編がヤクザ・暴力団がらみの事件ばかりで、それぞれ相談の案件を持ち込んできた依頼人や事件関係者のために、志田司郎がどう事態の落しどころを探すかが興味の主体。
 肝心のミステリ味は、事件の裏の策略や、意外な動機を暴くかたちで数編の話で発露する。
 
 巻末の「難民哀歌」は、日本に来た中国人留学生が苦学生として学業の傍らで就労するなか、仲介業者のヤクザとその顔色を窺う雇い主に賃金を搾取される話。外国人労働者の奴隷化が社会問題になっている2010年代の終りだが、30年前からこんな話題はあったのである(物語の背景には、当時世界に反響を呼んだ天安門事件がからむ)。

 安定した面白さだが今回もそれなりにバラエティ感には富んでおり、中年の貧乏私立探偵の矜持のあり方に、いかにも生島らしいハードボイルド観が覗く話も散在する。
 最近、私的にあれこれあって本がまとめてゆっくり読みにくいこのしばらくだが、ちびちび一編ずつ楽しんで、心の渇きを癒やしてくれる一冊であった。

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