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ミステリの祭典

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つるべ心中の怪 塙保己一推理帖

作家 中津文彦
出版日2008年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 小原庄助
(2019/12/24 08:44登録)
江戸時代の日本の文化度は極めて高かった。庶民の多くが文学を読むことができ、文化に親しんだ。天才も多かった。なかでも農民の子に生まれ、七歳で失明しながら、抜群の記憶力で和漢の学問に通じ、膨大な我が国の古典叢書「群書類従」を編纂した塙保己一は異色の天才である。
この作品は、その塙保己一を主人公とした時代推理小説。偉大な学者でありながら持ち前の好奇心で事件に首を突っ込み、独特の勘を働かせて推理する。
三話を収録されているが、表題作の第一話は、店の手代とつるべ心中した札差の女主人の話。つるべ心中とは、同じひもの両端に輪をつくり、同時に首をつって死ぬというもの。よくある身分を越えた恋の果て、といえばそれまでだが、保己一の勘が殺人事件を炙り出す。
時代推理ものには違いないが、保己一をめぐる家族関係や、周辺の人物、編集にまつわる話がさりげなく語られていて興味深い。

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