In the Mayor's Parlour |
---|
作家 | J・S・フレッチャー |
---|---|
出版日 | 2018年06月 |
平均点 | 4.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 4点 | mediocrity | |
(2019/12/13 05:45登録) 1922年発表。全25章。 本作の舞台、中世の香りを色濃く残すHathelsboroughは全イングランドで最も保守的で汚職のはびこるborough(バラ)という設定である。John Wallingfordは元々はよそ者だが、前年、市長に当選した(mayorの和訳は市長が一番しっくりくるので、以下市長で統一します)。汚職を何とか一掃しようとしている急進的な改革派だが、守旧派からは当然反発されている。 彼は、毎日夕方になるとMoot Hallという古い建物にやってきて、夜遅くまで部屋(Mayor's Parlour)にこもり何か作業をするのが常だった。事件当日も市長はいつも通りMoot Hallにやってきて、門番のBunningに「いとこのBrentが訪ねて来るはずだが、それ以外は誰も通すな」と言って建物に入る。35分後、Brentがやって来てBunningが部屋に案内すると、そこにはいすに座ったまま動かない市長の姿が・・・。 その後の調べで、背後からレイピアのようなもので刺され即死であったことがわかった。この建物には入り口が3つあるが、どの入り口からも人が入った形跡はない。一応、密室のような状態である。犯人は一体どうやって部屋に入り、出て行ったのだろうか。市長のいとこで、ロンドンのジャーナリストBrentが謎を解く。 <ネタバレあり> 探偵役が被害者の親戚ということを除けば代表作『ミドル・テンプルの殺人』と似たような設定である。 主人公と守旧派ボスの姪とのロマンスなど、半分辺りまでは楽しく読めたが、その後はなんだか退屈なシーンが多く、なかなか読み進む気が起きなかった。連載のために無理やり引き延ばしたような印象を受けた。 密室に関しては、見張りとして機能していた人物が一時的にいなかったというズッコケもののオチである。もっとも、最後に真犯人の供述がないので、実際の犯行については詳述されずに終わってしまう。 前に読んだ2作は、ページ数が足りなくなって最後説明不足に陥ったのだと思っていたが、また同じとなると、これがこの作家のスタイルなのかもしれない。 最後の死因審問は殺人の夜の少し意外な事実が暴露されて面白かったが、それ以外は安っぽい社会派ミステリーという印象。 |