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ミステリの祭典

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相棒

作家 五十嵐貴久
出版日2008年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 びーじぇー
(2019/12/12 20:30登録)
ウォルター・ヒル監督の名作「48時間」にインスパイアされた側面を持つ作品。
刑事と囚人のコンビが脱獄犯を追う二日間を描いた映画であり、本書のタイムリミットはそこから来ている。コンビの立場の違いも映画になぞらえたもので、龍馬が浅黒い肌の男、土方が色白として対比されているのも、黒人の囚人(エディ・マーフィ)と白人刑事(ニック・ノルティ)を暗示させるためだ。
バディ(相棒)映画の代表作の設定を拝借しながら、江戸時代末期を舞台にしているところが本書の最大のオリジナリティである。当時、大政奉還という幕府にとっての安全策をとらせることを嫌う人間は、薩長同盟はもとより、幕府方にも少なからずいた。要は、大政奉還の是非については敵味方の境さえ曖昧であり、誰が事件を引き起こしたとしても不思議ではなかったということ。そのような状況で、佐幕派に知られた土方と勤皇側に顔のきく龍馬という二名を探偵役にすることは、あらゆる容疑者との対面を可能にする。それにより本書は、西郷隆盛から岩倉具視まで、幕末オールスターキャストが容疑者という豪華な犯人捜しが楽しめる贅沢なミステリとなっているのである。実在する事件と真相を絡めた点は、歴史ミステリとして大いに評価できるところだろう。同時に対立する二人がやがてお互いを認め合う凸凹コンビもののお約束の展開もきっちりと描かれているエンターテインメント小説。

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