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ミステリの祭典

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フラクション

作家 駕籠真太郎
出版日2015年11月
平均点1.00点
書評数1人

No.1 1点 おっさん
(2020/06/27 17:32登録)
「これは駄目駄目なやつだ!!」

かねてより、このミステリ漫画が凄い、的な噂を耳にし、気にはなっていた作品でしたが……
古本屋でたまたま見かけ、収録されている、作者と霞流一の対談に目を通しているうちに、ちゃんと本編を読んでおきたくなり(駕籠「今回はいつもと違って、サスペンスミステリーの完全書き下ろしなんです」「――小説の専売特許である叙述トリックを漫画で行うことは可能なのかということを、試してみたんですね」)、つい、買ってしまいました。
魔が差したとしか、言えないですね。

2009年にコアマガジン社から出た、ソフトカバーの単行本で、他に四編ほど短編も入っていますが、そちらはまっとうな(?)エロとグロと不条理の作品群で、これが作者本来のテイストなのでしょう。
肝心の『フラクション』の、お話はというと――
サイコキラーの“連続輪切り魔”が、模倣犯の正体を探究していくうちに、あたかも胴体を切断された死者のよみがえりのような現象に直面するという、まるで殊能将之と島田荘司を混ぜ合わせたかのような「WAGIRI−MA」パートが、まず、あるわけです。
そして、それと交互に語られるのが――
いま世間を騒がせている、未解決の連続輪切り魔事件をネタに、実録漫画を描くよう編集者に持ちかけられた、エログロ漫画家・駕籠真太郎が、自分は作風を転換してミステリー漫画にチャレンジしたい、それも漫画ならではの手法を用いた叙述トリック作品に! と、くだんの編集者相手に、熱のこもった叙述トリック談義を繰り広げる「MANGA−KA」パートです。
この、ふたつのパートは、それぞれに異常なクライマックスを迎えることになり、そして……

冒頭の感想に至ります。
読者を驚かせることに全振りし、ストーリーの整合性やトリックの必然性を度外視したら、それはもうミステリ(―)ではないでしょう。
作中の「MANGA−KA」パートには、
 
 「ミステリーっていうとどういうやつです? 名探偵コナンとか金田一少年とか…」
 「う~んまあそれもミステリーって言えなくもないけど…」

といった、やりとりを描いたシーンがありますけど、『フラクション』に比べたら、コナンや金田一少年のほうが、ちゃんとしたミステリ(―)ですよ。そして、「漫画」という媒体ならではの、ミステリ的な工夫を施した作品も、そこには幾つも存在するわけで、少なくとも、筆者はそちらのほうを評価するなあ。

ただ。
この破綻した作品に、圧倒的な個性があることは――個性だけがあることは、認めざるを得ない。
中途半端な点数は、かえって、ふさわしくないでしょう。よって、1点。
でも、もし許されるなら、フラクション(分数)にちなんで、二分の一の0.5点を付けたかったw

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