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ミステリの祭典

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ミステリー傑作選・特別編6 自選ショート・ミステリー2
日本推理作家協会編

作家 アンソロジー(出版社編)
出版日2001年10月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 バード
(2019/10/08 12:05登録)
前作「自選ショート・ミステリー」の正統続編で、出来はいい意味でも悪い意味でも前作と変わらない。
全体的な評は「自選ショート・ミステリー」の書評と同じなので、以下特に気に入った個別作品の書評。

新保博久 「雨のち殺人」
本短編集で一番出来が良いと思った。女性を脱がして視聴率を稼ぐ天気予報という、今だと少し問題になりそうな番組設定で読者を導入し、奇抜な番組を利用したアリバイ工作がシンプルながら光る。そしてそんな工作が天気予報キャスターのまさかの行動で裏目にでるという展開。
物語のオチとしても十分かつ、周到なアリバイ工作も予期せぬ展開の前には無力ということを思い知らせる良い終わり方と思う。

斎藤肇 「足し算できない殺人事件」
短い話に二つの叙述トリックをねじ込んだせいか、非常に読みにくい。それに叙述のやり方が結構力技というか、美しさを感じないやり方なので特別優れたミステリとは思えない。しかし、雰囲気ホラーでお茶を濁す作品が多い中で何とかミステリとして爪痕を残そうとしてる感じがし、結果的には割と好きな話です。

依井貴裕 「奇跡」
結婚式の二次会で、客の手品師が披露した奇跡のネタが本短編の謎である。手品はネタが割れるとしらけるというのが定番だが、この手品のネタはそうでもなく、寧ろよくそんなリスキー(手品師とその友人の花婿にとって失敗した時のリスクが大きい)な手品をやったなあと感心させられるものである。読後感がすっきりしているのも本短編の魅力。

高井信 「不思議な能力」
不思議な能力として、あんなくだらん能力を紹介されたら主人公みたいに呆れるしかないでしょう(笑)。呆れかえった主人公が浴びせる最後の言葉が皮肉とユーモアの利いた返しで気に入った。

上記4つからは落ちるが、新津きよみさんの「ホーム・パーティ」、斎藤栄さんの「星の上の殺人」、篠田節子さんの「春の便り」あたりも気にいっている。

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