(2019/10/07 23:15登録)
(ネタバレなしです) 初出は「スーパーひたち3号96分の罠」というタイトルだった1990年発表の本格派推理小説です。商談のために出張中の男が特急列車から消えてしまいます。会社の私立探偵ならぬ社立探偵が事件の謎解きに挑むプロットです。会社員経験のある作者は講談社文庫版の作者あとがきで「カイシャイン」がミステリーの探偵役になることに違和感を覚えたことが社立探偵の創立につながったと解説していますが、確かに一介の会社員が犯罪の謎解きで活躍するのは非現実的ではあるでしょうけど会社組織に社立探偵がいるという設定だってリアリティがあるとは思えません(古くはクリストファ・ブッシュの「完全殺人事件」(1929年)にも登場してますが)。犯人当ての謎もありますがそれよりもどうやって走行中の列車からの誘拐を実現したのかというハウダニットに重きを置いたようなプロットで、複数のトリックを組み合わせていますが理系トリックについては既に時代の古さを感じさせているように思います。動機にもかなりの独創性を感じさせてはいますが、あれだけの工数をかけた犯罪計画には見合わないような気もします。
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