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ミステリの祭典

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彼女は死んでも治らない

作家 大澤めぐみ
出版日2019年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2019/09/29 13:51登録)
(ネタバレなし)
「わたし」こと女子高校生の神野(じんの)羊子は、学友の超美人・蓮見沙紀のことが大好き。だがそんな沙紀ちゃんは、ことあらば惨殺されてしまう殺され体質? の持ち主だった。だが沙紀ちゃんは何度でも生き返る。羊子がその側にいる男子・昇の協力を得て、真犯人を突き止めた時には。だがそうやって繰り返される平穏な日常に、少しずつ変化が……。

 角川スニーカー文庫系で数年前から活躍中の新世代ラノベ作家・大澤めぐみが、初めて他の版元から刊行した書下ろしの青春ミステリ。

 本編は合間に間奏エピソードを挟む全四篇の連作中編ミステリの形式で語られるが、設定はあらすじのとおりに相応にぶっとんだ代物。
 それでクライマックスの最終話に至る前、1~3話各編のミステリ的な完成度はフツーというか、正直、1話がまあまあ、2話がはあ……、3話がしょーもない、という感じの出来。
 ただまあ本作品全体をしめくくるくだんの第4話では、作品世界の大前提となる超常的なシステムの真相もふくめて、怒濤の仕掛けが明らかになる。ここで唸らされる人も多いだろうし、一方で事前にある程度の予想がついちゃう人も少なくないという印象。
 
 本作の魅力は主人公の羊子の一人称(ボケも多いが他者へのツッコミも豊富)の語り口、それに3人目、4人目のヒロインとなる学友の美少女たち・熊谷乃亜と等々力楓の妙に冷静&達観した物言いで、たぶんこの辺が作者の持ち味なのだろう。まあこういうのが21世紀の今、ウケてるのはわかる、という感触ではある。

 しかし清濁の混合をさらけ出したクライマックスのあと、クロージングがとにもかくにも青春ミステリらしく決着するのはよいが、いい話でまとめるには、かなり重要な問題が見落とされて(あるいは軽視されて)ないか? という気にもなる。作者が確信的にその辺をスルーし、よかったよかったと胸をなで下ろしている読者たちを「ふっふっふ」と陰で笑ってるのだとしたら、なかなか意地が悪い(笑)。
 作者が(広義の)ミステリをまた書いてくれたら、その時は読みます。

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