フラックスマン・ロウの心霊探究 心霊探偵フラックスマン・ロウ |
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作家 | E&H・ヘロン |
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出版日 | 2019年06月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2019/09/24 18:39登録) (ネタバレなし) ミステリマガジンや各種・英国クラシックホラーのアンソロジーなどにこれまで四篇のみ邦訳があるオカルト探偵(表稼業は心霊学者)フラックスマン・ロウの事件簿、全12篇の連作短編を初めてまとまった形で翻訳した一冊。 作者E&H・ヘロンは、英国の小説家ヘスキス・プリチャード(1876-1922)とその母、ケイト(1851-1935)の合作ペンネーム。息子の方は単独で、ホームズのライバルたちのひとり=カナダの狩人探偵ノヴェンバー・ジョーを主人公に据えた連作『ノヴェンバー・ジョーの事件簿』の創造主としても知られる。 評者的には、本当にスーパーナチュラル要素が存在する世界観での小説分野でのオカルト探偵の最高峰は、昔ならカーナッキ、後年ならサイモン・アークである(糞面白くもない、あまりにもフツーすぎる定番の観測&評価だが)。 それで本作の主人公フラックスマン・ロウの雑誌デビューは1898年、全12篇が完結して本になったのが翌1899年だそうだから、1910年に雑誌デビューのカーナッキなどよりずっと活躍時期は早い。その辺が、このフラックスマン・ロウが、オカルト探偵キャラクターの始祖的存在としてもてはやされる所以らしい。 シリーズの中身は基本的に、各地の幽霊屋敷の怪異を探求、事態の解決のためにロウが乗り込んで行くパターン。 謎の異形の幽霊、見えざる何か、神出鬼没の小人、包帯を巻いた幽霊、瞬時に被害者を絞殺する謎の殺人魔、突如現れる巨大な幽霊の顔、燐光人間……とオバケのネタは豊富だが、基本的に似たパターンの同工異曲の話の流れではあるので、その辺がちょっと倦怠感を呼ばないでもない。 レギュラーのワトスン役も用意されておらず、本当ならその手の相棒との掛け合い芝居的な、ヌカミソサービスでもあればいいんだけどね。 ただし(あまり詳しくは書けないが)後半になっていくらか変化球っぽい話も飛び出し、この辺は作者コンビもいつまでも似たような話じゃダメね、チェンジアップを効かせましょ、とシリーズ構成の工夫を試みたフシは伺える。最後の二篇は前後篇で、ミステリファンにはおなじみのあの大悪役を思わせるキャラクターが登場してくるのもちょっと楽しい。 個人的にホジスンの『カーナッキ』のどこが好きでどこが優れているのかと問われれば、ひとえにあの鮮やかなシリーズ構成にあるのだけれど、作者ホジスン、当該ジャンルの先駆作として、この『フラックスマン・ロウ』から素直な先輩としても、また反面教師としても、学ぶところが多かったんじゃいないかな、と思う。 そういえば『ドラキュラ紀元』には、このフラックスマン・ロウは客演してたんだったかな? 名前だけでも出てきたかな。今度そのうち確認してみよう。 |