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ミステリの祭典

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黒い軍旗
戦争推理アンソロジー

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日1995年08月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 斎藤警部
(2019/09/16 10:45登録)
山前譲 編 飛天文庫  

十五年戦争を背景にした入魂の八短篇。

生島治郎/腹中の敵 8点
第二次国共合作前の上海。硬派な歴史ハードボイルド充実の中でこそ光る、ささやかなトリックの旨味。

佐野洋/某液体兵器 6点
太平洋戦争後期の追憶。戦争譚なのに氏らしい軟派なんちゃって社会派、良質の読み捨て短篇。

結城昌治/紺の彼方 7点
太平洋戦争後期から現在(つっても大昔)へ。戦争がダシに使われた犯罪への追想と、戦争が人間ドラマに繋がる現在視点のスケッチ。作者らしい仄暗さが良い。

日影丈吉/焚火 7点
占領下の割と平穏な台湾。あからさまに非ミステリ。妙に心に残る不思議な兵士への追想。皮相なようで芳醇な内容。(微妙に褒めすぎか?)

森村誠一/神風の殉愛 7点
特攻の頃と、現在(つっても昔)。社会派エッセイめいた戦時人情譚で締めるかと思いきや、後半は本格味の強い倒叙サスペンスへ思い切って転換。最後のほう、主人公が突然ちょっと嫌な奴に描かれるのは、読者が結末にあまり絶望しないようにとの、作者のぬるい優しさ故か?

山田風太郎/狂風 8点
降伏前後。いきなりモノが違う猛烈な文章世界に襲われました。日本の未来を巡って醫学生たちのぶつかり合う主張、重なって弾き合う心情。世代間の不信と、戦勝国達による詰め手の畳み掛け。。。。結末で無理に本格ミステリに擦り寄ったのはいいがその本格要素がいかにも取って付けた風で弱い!それでなお高得点付けざるを得ん!!

膳哲之助/埋葬班長 7点
終戦直後ソ連領。長篇モノクロ映画を思わせる豊かな物語性と、過酷な状況でも”悪いことばかりじゃない”生活描写。消失トリックも味のうち。

石沢英太郎/つるばあ 8点
終戦直後の大連。主人公含む複数の人間ドラマが事件を巡って精妙に交錯、ハードボイルド的センチメントが充満し爆発寸前へと。 序盤に見えた大味な物理トリックへの予感は、絶妙に淡いミスディレクションに片腕絡めた人間ドラマと見事に融合、味わいあるトリック顛末として花を咲かせています。小道具のバター缶も光ります。最後に明かされる「つるばあ」の意味。。。なんかこれ、微妙にタイミングが緩いというかおかしい気もするんだが、、妙に味わい深い。

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