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ミステリの祭典

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GENE MAPPER -full build-

作家 藤井太洋
出版日2013年04月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2019/09/12 10:03登録)
技術系の知人と話していると、時々、現実の話なのか、空想なのか戸惑うことがある。今やコンピューターが描き出すバーチャルリアリティー抜きには現実を語れず、遺伝子操作も環境問題もテクノロジー産業で商品化が進んでいる。
この作品は、遺伝子設計技術と拡張現実技術が普及発展した近未来を舞台にしている。完全に遺伝子設計された「蒸留作物」が食卓の主役になっている時代。遺伝子デザイナーの林田は、自分が手掛けたイネが遺伝子を崩壊した可能性があると告げられる。
操作プログラムが暴走して封鎖されたインターネットから原因究明用のデータを探り出すため、林田はベトナム在住のハッカーに協力を依頼。コーディネーターの黒川と共に事件の真相を追う。
インターネット崩壊、コンタクトレンズに投影される拡張現実、遺伝子工学による農業、地域環境や社会産業構造の変化を織り込み、技術が暴走する危険性を描きながらも、科学技術とその最前線に立つ技術者への信頼も感じさせる好著。
著者は、ソフトウェア開発に関わる技術者であり、本書の原型は電子書籍として個人出版されて大評判になった。著者の視野には、近未来が「現実」として把握されているかのようだ。

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