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ミステリの祭典

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海野十三全集 第2巻 俘囚

作家 海野十三
出版日1991年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2019/09/11 22:27登録)
日本SFの始祖の一人と言われる海野十三の作品集。
その昔、何かの本(アンソロジー)で『振動魔』を読んで痛く感銘を受けた記憶が今でも生々しく、この度本作品集を手に取ってみた次第です。ごつい箱入り、パラフィン紙にくるまれたハードカバー、11ページに亘る高橋康雄による『海野十三と「新青年」』の解説小冊子付きの謹製版。

SFにしようか本格にしようか迷った挙句、どちらかと言えばミステリの色が濃いと思われたので本格に一票投じました。しかし、やはり全体を通してSFの要素が強く感じられ、来歴によるものと思いますが、多くが化学あるいは科学、医学といったギミックがトリックに採用されています。
個人的には『俘囚』『三人の双生児』がツートップで、さらに『赤外線男』を加えたこれらの作品は、後世の作家たちに少なからず影響を与えたのではないかと、勝手に想像しています。京極夏彦の代表作や鮎川哲也の有名作には明らかにその傾向が見られます。1930年代にこのような奇想を湛えた諸作が存在したこと自体驚きですが、日本人ならではの気質のようなものが大いに関係しているのではないかと感じました。本来日本人にはこうしたある種変態的な嗜好があったと思われ、それはその後のミステリ作家に脈々と受け継がれ、さらに手の込んだ同じ傾向の作品が現在でも時々生まれているようです。

私はことミステリ文化に関してだけは、日本に生まれてよかったと心から思っています。何故なら日本のミステリが世界一だと勝手に信じているから。
本作品集を読むにつけ、それを痛感します。

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