home

ミステリの祭典

login
20世紀ラテンアメリカ短篇選

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2019年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2019/08/29 09:28登録)
「中南米文学、何から読めばいいかわからない」方に推薦したいのが、スペイン語圏文学の目利き・野谷文昭による本書だ。
マヤの仰臥人像をめぐるカルロス・フエンテスの恐怖譚「チャック・モール」のような有名な作品から、未知の作家の隠れた名作まで16篇を収録。初心者のみならずディープな読み手も満足できる逸品なのだ。
静養のため、湖畔の別荘に滞在している病み上がりの(僕)。地元住民から「鮭(サルモン)先生」と呼ばれる医師のめいと宿命的な出会いを果たし、愛するようになるも・・・。マッドサイエンティストSF風味の、ひねりの効いた恋愛譚になっている、アドルフォ・ビオイ=カサーレスの「水の底で」。旅先で夜の散歩に出かけた(僕)を襲った強盗が要求したのは金品ではなく、目だったというオクタビオ・パスの幻想ホラー「青い花束」。
といった、ハズレなき名篇ばかり収められているのだけれど、アンチ・ハッピーエンド派の方にお薦めしたいのは、アンドレス・オメロ・アタナシウの「時間」だ。掌編5作で構成されていて、最後に必ず息を呑むような仕掛けが用意されているのだけれど、それがもたらすのはかなりシニカルな読後感。笑い、驚き、恐怖、さまざまな読み心地と出合えるアンソロジーなのである。

1レコード表示中です 書評