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ミステリの祭典

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カリスマvs.溝鼠 悪の頂上対決

作家 新堂冬樹
出版日2019年06月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2019/08/23 18:51登録)
(ネタバレなし)
 伝説の復讐代行人・鷹場英一の薫陶を受けた真性サディストの美女・(佐久間)半那は、2人の変態男性とすれっからしの女子高校生を手駒に、鷹場の意志を受け継いだ復讐会社「リベンジ・カンパニー」を営む。そんな半那の次の標的、それは20年前に彼女の家庭を滅ぼしたカルト教団「神の郷」の残党の男、明鏡飛翔を教祖と仰ぐ新世代の教団「明光教」だった。

 先に評者が読んだ、同じ作者の昨年の新刊『痴漢冤罪』同様、悪と悪の対決ドラマ。エンターテインメント性の高い通俗ノワールとでもいうべきか。

 本作の大設定は、かつての作者の人気シリーズ・鷹場英一ものと、話題作(代表作の一つ?)『カリスマ』、双方の世界観を受けた新世代クロスオーバーだそうだが、評者は新堂作品はまだ3冊目。読んだのはどれもここ数年のリアルタイムの新刊ばかりだから、当然、原典となる双方の旧作(旧作シリーズ)も知らない。それでもほとんど特に問題なくスムーズに読めた。
 まだ新堂作品ビギナーの自分には相応に苛烈な(一方でどっか笑ってしまう)残酷描写などもあるが、Webでの噂を伺うと、絶頂期の新堂作品はもっとはるかにスゴかったらしい。うーむ、そっちも読んでみたいような、止めた方がいいような。
 本作そのものの感想はハイテンポにグイグイ読ませるが(どちらかというと主役は、半那サイド)、一方で随所にそんなにうまく行きますか? なんでここで予防策をとらないの? 的なツッコミどころもいくつか。ラストの山場も大雑把だけど、エピローグも舌っ足らずだよね。読者に解釈で補強してくれ、ということだろうか。
 日頃あんまり読まない傾向の作品だけど、それでも新作でも旧作でもたまにこういうものも補給したくはなる。3時間は楽しめたので、まあいいか。

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