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ミステリの祭典

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鯖猫長屋ふしぎ草紙

作家 田牧大和
出版日2013年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2019/08/13 10:02登録)
猫専門の絵師、拾楽が飼っている鯖縞柄の雄の三毛猫サバが一番威張っている江戸の長屋を舞台にした人情捕物帳である。
拾楽は、長屋に越してきた美女お智が起こす恋愛騒動、怪しい開運うちわを売っていた男が逆に脅される事件、読本作家のもとへ現れる幽霊などの難事件を解決していく。物語は一話完結のように思えるが、終盤になると一度解決した事件が伏線になり、驚くべき真相が浮かび上がるので、長編としても楽しめる緻密な構成になっている。
当初はコミカルな展開も多いのだが、拾楽とお智の謎めいた言動の秘密が解かれるにつれ、人には誰にも見せない心の闇があることも浮き彫りになってくる。だがラストには、絆と人情こそが心の闇に対抗できる唯一の手段とのビジョンが描かれるので、晴れやかな気分になれるはずだ。

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