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ミステリの祭典

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ハワイの気まぐれ娘
私立探偵ダニー・ボイド

作家 カーター・ブラウン
出版日1962年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2019/08/02 17:23登録)
(ネタバレなし)
「おれ」こと、横顔(プロフィール)の男前ぶりに自信がある、ニューヨークの私立探偵ダニー・ボイドは、実業家エマーソン・レイドの依頼を受けてハワイに来ていた。仕事の内容は、エマーソンの若妻ヴァージニアがこの地で高級ヨットの船長エリック・ラーセンと不貞を働いているのでその現場を押さえ、ハワイから二人を放逐しろというものだった。不倫の証拠固めだけなら理解できるが、なぜハワイから両人の追放まで完遂させる必要があるのかとボイドはいぶかる。そんなボイドはまずエマーソンの指示を受けて、ハワイの現状のガイド役を務めるという若い娘ブランチ・アーリントンの自宅に向かったが、そこで彼が見たのは喉を裂かれたブランチの死体だった。やがて事態は、十数年前に起きたある過去の事件へと連鎖していき……。

 1960年作品。おなじみのミステリ研究サイトaga-search.cの書誌データに拠れば私立探偵ダニー・ボイドの第四作目。
 評者の場合、これもまた大昔に読んで忘れているかもしれない、それでもまあいいや、と思って頁をめくったが、最後まで読んでも、たぶんコレは初読の作品のようだった。とりあえず一安心(笑)。
 序盤からの意図不明な殺人、依頼人の奇妙な依頼、主人公の探偵を見舞う危機、そして物語のハシラとなる、ハワイ当地のモロ現代史にからむ(中略)……とエンターテインメントとしてのお膳立ては充分。ストーリーの後半は私立探偵主役の推理小説というよりは冒険スリラーに近くなるが、最後まで二転三転の筋運びでアキさせない。
 細部で「そこのところはどうだったんだ?」とツッコみたくなるような描写が出てくると、作者の方でうまい呼吸で切り返す手際も良く(第11章の辺りとか)、実にストレスもなく楽しめる娯楽編。 
 殺人事件のフーダニットとしては手がかりや伏線がほとんど用意されてないのは弱いが、真犯人の発覚に際してはこの作品なりに工夫も設けられており、なかなか悪くない感触ではある。
 「誰が最後に笑うか」パターンで隙あらばだまし合おうとする悪党どもも、そして最後にボイドを(中略)する意外な伏兵も、良い感じでキャスティングが揃えられている。三時間はしっかり楽しませてくれる一冊。

 ちなみにタイトルロールの「ハワイの気まぐれ娘」ってのは、ハワイの酒場「ハウオリ・バー」のフラ・ダンサーでハワイ諸島の一角ニーハウ島出身の美少女ウラニのことなんだけど、それほど気まぐれ娘じゃないし(どっちかというとマジメな子)、そもそもメインヒロインでもない。メインのヒロインは、ブロンドでおっぱい美人のヴァージニアの方なんだけどね。まあカーター・ブラウン作品の邦題はお女性がらみのタイトリングが通例なので、せっかくのハワイ設定にちなんだウラニの方を題名に持ってきたって事だろうけど(そもそも原題からして「The Wayward Wahine」だから「強情なポリネシアン=ハワイ娘」の意味で、そんなにおかしくはないのだが。)。

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