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ミステリの祭典

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推理小説の誤訳
古賀正義

作家 事典・ガイド
出版日1983年01月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 弾十六
(2020/07/02 04:30登録)
誤訳の指摘って、昔『翻訳の世界』で別宮先生が欠陥翻訳を大胆に連載されていたのだが、する側もされる側も労多くて益少ない行為です。まあ大人が他人を非難するって大変な行為であることは社会人になったらわかるよね?学生気分が抜けて無い青年ならともかく、分別ある大人なら普通は面倒くさいことになるからしないもの。(別宮先生も最初は他多数の評者が欠陥翻訳を切るという企画だったのだが、結局他の評者は途中で辞めちゃった) だからこーゆー評論風文章も顔を晒してなんてとても私には出来ません。
そういう意味では貴重な本なんだけど、本書の感じは弱いものいじめに見える。大体、実名を出す必要ある?まあ早川や創元は今となっては翻訳大手なんだけど、戦後のドサクサでミステリ翻訳に手を出した翻訳業界の新興出版社だし、ミスの内容も翻訳後の日本語をちゃんと編集が読んでいれば、変テコだとわかるレベル。数だって1ページ数箇所なら誤訳の欠陥商品だが、単行本全体で100以下なら立派なもの。それに早川も創元も編集者も翻訳者もそのほとんどは英語の専門家じゃないからねえ。(まあプロなら言い訳出来ないだろうが…)
大体、この著者の時折混ぜるふざけた調子が不愉快。本気で誤訳を指摘したいなら、あんたの本業の法律業界のをやれば良い。(飛田さんの立派な新書『アメリカ合衆国憲法を英語で読む』は、法律の専門では無いが…と断りながらも、従来の大学のセンセーの翻訳の間違いを真摯に指摘しています。もちろん訳者名は明記していません。まあ著書名や出版社は明記してるので調べればわかるのですが、これがマナーでしょう)
以上はともかくとして、日本人が間違いやすい英語の本としては(現在でも多分)非常に有益。英語の辞書や授業で習った一般的な語意に引きずられたり、慣用句を知らなかったり、特殊知識が無かったり、と言った原因がほとんどです。
私が浅黒警察としてこだわってるdarkも記載されていますよ。この著者は「黒髪」でも不満で「ブリュネット」が正解だと言う。それ日本語じゃ無いよ…
文庫にもなったので売れたんでしょうね。(最近私が誤訳を知ったケースで『ボートの三人男』の有名なサブタイトル「犬は勘定に入れません」があった。河出古典の良い仕事。でもドスト亀山はかなり問題があるらしい。検証ページを見たことがあるだけですが…)

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