カッコーの歌

作家 フランシス・ハーディング
出版日2019年01月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 糸色女少
(2019/07/06 09:51登録)
第一次世界大戦終結から間もない1920年の英国を舞台にしたダークファンタジー。
激しい頭の痛みを感じながら意識を取り戻した少女は、耳元で「あと七日」という言葉を聞く。トリスという名前らしいが記憶は曖昧で、自分が何者なのか自信が持てない。妹のペンは自分を「偽物」とののしり、嫌っている。
伝統的な社会秩序を守ろうと、子供たちに厳格に臨む両親に対し、戦死した兄の婚約者ヴァイオレットは、女性の社会進出を象徴するような行動派。物語の基底には、伝統派と進歩派の双方が抱く「今ここにある世界」への違和感がある。
恐怖と暗さに彩られた不思議な現象が頻発し、この世界は何者かに侵食されているらしい。それに気づいた少女は、「自分は何者か」という問いを抱え続けながら、ペンと協力して世界の謎に挑むことになる。その答えは「自分探し」ではなく、「自分はどうするか」という挑戦の先にある。

1レコード表示中です 書評