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ミステリの祭典

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復讐

作家 タナダユキ
出版日2013年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 猫サーカス
(2019/07/02 19:54登録)
マスコミを大きく賑わせた事件は、当事者ばかりでなく、その家族をも巻き込んでしまう。この作品は、事件によってそれぞれの人生を狂わされた者たちの「復讐」をテーマにした犯罪小説。数学教師の中井舞子は、北九州市の戸畑第一中学校へ赴任した。舞子は始業式の朝、校長から「ちょっと複雑な子」と耳打ちされた生徒、橋本晃希と偶然出会い、その暗く沈んだ瞳を目にする。ところが教室での晃希は、明るい優等生の態度を崩さなかった。やがて、ふたりの隠された過去と、それぞれが巻き込まれた殺人事件の秘密が徐々に明らかになっていく。忌まわしい過去がどこまでも追いかけてきて、逃げ場はどこにもないという点で、ふたりは似た者同士だった。だが、決定的に異なるのは「復讐」に対する思いだった。映画監督でもある作者は、地方都市の風景を丹念に描写するとともに、追い詰められた者たちの歪んだ感情を生々しく書き込んでいる。読んでいると息苦しくなるほど。また、その地方の伝統的な祭り、戸畑祇園の盛りあがりと歩調をあわせるかのようにクライマックスへと向かう展開も見事。胸に迫るサスペンスともいえる。

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