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ミステリの祭典

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野獣の罠
新聞記者(ブンヤ)稼業シリーズ

作家 伴野朗
出版日1981年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2019/06/16 06:52登録)
 秋田とおぼしき地方の一都市を舞台に、組織に属する事を嫌う東北ブロック紙"はぐれ記者"の日常を、地方色豊かに描いた〈新聞記者(ブンヤ)稼業シリーズ〉の第一集。山小屋入りした老人が無抵抗のまま絞殺死体で発見される「狢(むじな)が殺した」から、主人公のもとに持ち込まれた放火予告が、自殺に偽装した殺人を含む複数の襲撃事件に発展する「甘い脅迫状」まで全六編収録。
 迷宮入りその他地元で起こる殺人事件の謎を、なんとか記事ネタにならないかと探っていくうちに意外な真相に突き当たる、といった筋立てで、タイトルや表紙がアレな割には派手なアクションがある訳でもなく、至って普通の短編集。ズーズー弁での遣り取りや、一作目の土俗要素・表題作のドブ板選挙に代表される田舎のドロドロが目立つ程度。そのあたりの描写には作者の地方支局時代の経験が十分に生かされています。
 ミステリとしては新聞記者らしく、証言記録や発言の矛盾・言葉の取り違えが解決の鍵となる場合がほとんど。実際に起きた事件をアレンジしたものもあるそうですが、そういった生々しい手触りがシリーズとしてのウリでしょうか。個人的にあまり好きではないのですが。
 強いて挙げればコンビナート建設反対運動に絡む殺人事件で、ミスディレクションがやや念入りな「遅い夏」、松本清張テイストの「嗅覚の死角」が少し印象に残る程度。全体としては一長一短あるものの、どれも可もなく不可もなくといったところ。第38回推理作家協会賞を受賞した第二集「傷ついた野獣」がどの程度のものかは分かりませんが、本作ちょっと肌に合わなかったかな。

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