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ミステリの祭典

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チューダー王朝弁護士シャードレイク
マシュー・シャードレイク

作家 C・J・サンソム
出版日2012年08月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 tider-tiger
(2019/07/07 06:57登録)
~1537年(織田信長や豊臣秀吉が生まれた頃)イギリスではヘンリー8世が腐敗著しい各地の修道院を次々と監査、解体していた。そんなおり、スカーンシアのドナトゥス修道院に監査に赴いていた弁護士が首を斬り落とされて殺害される。摂政クロムウェルは弁護士シャードレイクに調査を命ずる。かの地でシャードレイクが見たものは……

2003年イギリス作品。『チューダー王朝弁護士シャードレイクシリーズ』の第一作目にして作者のデビュー作です。作者自身も弁護士であり、一年間休暇を取って本作を執筆したそうです。
テーマや舞台背景などを絡めて愉しむ作品です。どうにかして潰されまいとする修道院、そうはいっても高邁な理想のためとはいい難い。そんな修道院内での人間関係、腐敗、各々のもくろみなど読み応えあります。確かにミステリではありますが、ミステリとしては並です。
主人公シャードレイクは身体に障碍があり、強い劣等感を抱いております。二作目ではかなり精神的に安定してきましたが、本作ではかなり不安定で人間臭いのです。
エンタメとしては二作目『暗き炎』の方がこなれており、キャラも立っています。筋運びも滑らかで冗長さも抑えられています。勝手な想像ですが、よい編集者がついたのでしょう。ただ、二作目はエンタメとして進化した半面、作者の書きたかったものが薄められているように感じました。作者の情念のようなものをより強く感じるのは本作です。

原題は『Dissolution』本作のタイトルとしては解体と訳すべきでしょうか。ダブルミーニングとなっております。邦題にしづらい類のタイトルです。

訳者あとがきの中に本作の歴史的背景に関する簡単な説明があります。英国史をあまり知らずに本作を読まれる方(私自身を含む)は先にこちらをお読みなることを推奨いたします。ネタバレはありません。
『薔薇の名前』と同様に修道院内で起きた殺人事件を扱っているので、『薔薇の名前』を読む前にウォーミングアップとして読んでみるのもいいかもしれません。

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