アッカの斜塔 英彦&夏子・兄妹シリーズ |
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作家 | 須知徳平 |
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出版日 | 不明 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | |
(2019/05/23 20:44登録) (ネタバレなし) その年の夏休み。「ぼく」こと英彦と推理小説好きの妹・夏子の兄妹は、母の末弟である学者の卵にしてアマチュア冒険家・「カクさん」こと寺坂格造とともに、岩手県北東部の山村に向かう。同地にはアッカ洞と呼ばれる広大な奥行きの鍾乳洞があり、カクさんは以前にそこであるものを見つけ、今回また再調査に赴くのだ。だがそのアッカ洞の中で、地元の変人「こじき松」が何者かに殴打されて倒れており、さらにカクさんが以前に発見した特異な形状の鍾乳石「アッカの斜塔」が部分的に損壊していた。事件性を認めた英彦と夏子は、土地の中学生、洋介・定八・忠太郎・キエコ・咲子の五人と少年少女探偵団を結成。アッカ洞に遺る長慶天皇の伝説も鑑みながら、事件の真実を追うが……。 同じ作者のジュブナイル不可能犯罪パズラー『ミルナの座敷』に続く、英彦&夏子兄妹シリーズの第二弾。ただし劇中では特に前回の事件は話題になっていないハズ。解釈としては純然たる前作の後日談(本作では2人は中学生に進学しているようである)と見てオッケーだと思うが、もしかしたら当時の作者的には、設定を初期化した、今で言うパラレルワールド設定のつもりだった? かもしれない。ちなみにまだ今回でも、兄妹の苗字はわからない(笑)。 本作は「毎日中学生新聞」編集部からの1963年夏の「少年少女向けの推理小説を」という要請に応じて執筆され、翌64年3月20日の奥付で東都書房から単行本として書籍化されている。本文は全176ページ。定価360円。あと1~2年すれば、当時のマルサンの怪獣ソフビ人形が一体買えるお値段だ。 特にどの叢書の中の一冊という仕様ではなかったようだが、巻末の広告を見ると当時の東都はこの手のジュブナイル書籍の刊行に積極的だったみたいである。 今回の本作の内容は、一応は密室からの盗難事件という不可能犯罪を扱った前作に比べて謎解きミステリ味が薄いということは前もってwebのウワサなどで聞いていたが、それでも現実に存在する鍾乳洞アッカ洞(正式な漢字表記は「安家洞」)は国内でも最長の奥行き(全長23㎞という)を誇り、その中での探検・冒険ジュブナイルミステリというのはそれなりに楽しくはあった(怪しい大人たちの人物配置が前作から続けて読むと、ちょっとムニャムニャ……な感じはしないこともないけれど)。 まあ21世紀の現在、ジュブナイルミステリとしての書誌的な素性を知らないで本当に一冊の作品として素で読んだら、かなり素朴すぎる物語ではある。 ちなみに元本しか刊行されていない上に、その書籍がかなりの稀覯本で、くだんの安家洞が存在する岩手県岩泉町の図書館もぜひとも蔵書に加えたいと思いながら、近年(2014年)まで入手できなかったようだ。評者も今回、運良く借りられたボロボロの本を、これ以上痛めないように注意しながら読了した。東都書房は講談社の系列だから、『ミルナ』の再刊とあわせて青い鳥文庫の名作復刻路線にでも入ってくれればいいんだけれどね。 |