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ミステリの祭典

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十一番目の災い
J・モンタギュー・ベルモア

作家 ノーマン・ベロウ
出版日2019年06月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2019/06/14 22:04登録)
(ネタバレなしです) 以前に「消えたボランド氏」(1954年)を読んで「これで裏社会の描写がもっとこってりしていたら本格派推理小説というより通俗スリラーになったかも」と生意気な感想を当サイトに投稿しましたが、その1年前の1953年発表のシドニーを舞台にした本書はまさに通俗色が「こってり」で、第11章で説明される2種類の裏社会、怪しげなナイトクラブや麻薬組織と普通の本格派とは大きく雰囲気が異なります。第17章ではそれまでに起こった犯罪の真相の一部が読者に知らされますが、そこには推理による謎解きがありません。直後の第18章で不可解な人間消失が起きるのですが、現場が犯罪組織の拠点であるナイトクラブでは中立公平な証人など期待しようもなく、謎解きに取り組みたい読者は途方に暮れるのではないでしょうか。結末の衝撃度ではある意味「消えたボランド氏」を上回るだけに、本格派好きの私としては読者の謎解き意欲をかき立てる工夫の足りない、惜しい作品に感じました。

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